それを打ち殺すのか
・御飯のしろさぬくさが手から手へ
・めい/\のこと考へてゐる灰皿をまんなかに
・ゆふべいろづいた柿がおちさうな
・なんとなくなつかしいもののかげが月あかり
・さみしさのやりどころない柿の落ちる
・郵便やさんたより持つてきて熟柿たべてゆく
[#ここで字下げ終わり]
十月四日[#「十月四日」に二重傍線]
晴、泥を洗ふ、曇、洗つても落ちない泥だ。
街へ出ていつたSがよろ/\とかへつてきた、うたれたのか、悪いものでも食べたのか、――それは私自身の姿でもあつた、みじめでやりきれない。
敬君来庵、Sを連れていつてくれた。
アルコールはありがたいかな、ぐつすりねむれた。
十月五日[#「十月五日」に二重傍線]
機縁が熟した、ぐうたらな、でたらめな生活よ、さようならだ、昨日と今日との間には截然として一線が劃された、私の心境はおのづからとけて、すなほにあふれて、あたゝかく澄んでゐる。……
○しづかなよろこび[#「しづかなよろこび」に傍点]、それはいづみあふれる水のやうな、奇蹟的に、昨日までの不平、焦燥も未練も憂欝も解消してしまつた、明るく澄んで、温かく冴えた境地へ到達してゐ
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