の卑怯な態度に腹が立つた、そしてすぐまた、あはれみいたはるのだつた。
方々から色々のたより、しみ/″\ありがたいと思ふ、とりわけてKのはかなしくもうれしい手紙[#「かなしくもうれしい手紙」に傍点]だつた!
断ちがたい執着、捨てきれない煩悩、愛憎好悪のいづれもの人生の姿であり人間の力ではないか。
払ふ、払へるだけ、そして買ふ、買へるだけ。
Sはぢやれる、私はふさぐ、犬と人とは。――
私の好きな、そして其中庵にふさわしい茶の花がもう咲きだしました、私は旅のおもひでにふけります、そして旅へ出たい、出なければならないと思ひます。
さびしさうな、かなしさうでもあるSを見よ、やりきれないではないか!
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・おもてもうらもやたらに糸瓜がむだばなつけて
・なつめはみんなうれておちて秋空
・つるべしたたるぽつちり咲いてゐるげんのしようこ
・秋の雨ふるサイレンのリズム
・藪風、逢ひたうてならない
・別れて遠い顔がほろ/\落葉して
・質のいれかへも秋ふかうなつた
・柿の木のむかうから月が柿の木のうへ
[#ここで字下げ終わり]
十月三日[#「十月三日」に二重傍線]
三時に眼が覚めて四
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