ころへ、給仕さんが、樹明君からの手紙を持つて、Sを連れて来てくれた、よかつた/\。
大田へ来てくれといふ電話ださうなが、行きたいけれど、いつもの金缺で行けさうもない、残念々々。
近在散歩、お伴はS、秋の雑草を貰つて帰る、苅萱、コスモス、河原蓼、等々、やつぱり苅萱がいちばん好きだ。
今夜はまた不眠で困つた、夜が長かつた。
油虫ものろ/\となつた、それを打ち殺す残忍さ。
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・昼も虫なく咲きこぼれたる萩なれば
・風がふく障子をしめて犬とふたり
・ここへも恋猫のきてさわぐか闇夜
・ゆれては萩の、ふしては萩のこぼるゝ花
・みごもつてこほろぎはよろめく
・どうでもかうでも旅へ出る茶の花の咲く
・朝は早い糸瓜のしづくするなどは
[#ここで字下げ終わり]
九月三十日[#「九月三十日」に二重傍線]
霧雨、午後は晴。
武二君から返信、さらに返信を書く――
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……失礼ながら打明けていへば、私は過去及現在の生活が続くならば、続けなければならないやうならば、私は自殺でもする外ないのです。
……行商は労働です、お言葉の通りです、そして行乞も労働です、もつと労働です
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