訪、ちり[#「ちり」に傍点]で一杯やる、松茸は初物なり、そしていつ食べてもうまい。
高木断食寮の研究生、中村幸治さんといふ青年来庵、長期断食をしたいが泊めてくれぬかとの事、私はSがゐてさへ神経にさはる位だからと断る。
彼は断食、私は絶食!
樹明君は風邪気味で夕方まで寝た、そしておとなしく帰宅、私はねむれないのでおそくまで漫読。
樹明君についていつたSがいつまでも戻つてこない、それがまた私の気分をみだす。……
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追加一句 津島にて
・おわかれの、水鳥がういたりしづんだり
改作二句
・つく/\ぼうしあまりにちかくつく/\ぼうし
・月へゆれつつバスガールのうたひつつ
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九月廿九日[#「九月廿九日」に二重傍線]
曇、晴れて秋空のよろしさ。
過去一切を清算して、新一歩を踏み出さなければならない、私はもう行乞する意力も体力もなくしてしまつたから、行乞を行商にふりかへて、改めて歩くより外ない。
Sは昨夜はとう/\戻つて来なかつた、多分、樹明君に踉いて行つたのだらうとは思ふけれど気にかゝる、午後になつたら、学校へ出かけようと心配してゐると
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