柿
・大風ふいていつた蟻はせつせとはたらく
・お地蔵さまへ生えて鶏頭の咲いてゐる
・秋の日の暮れいそぐ蒲焼のにほひなど
・いつからともなく近眼に老眼が、すゝきとぶ
ま昼虫なくそこへぽとりと柿が
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九月廿七日[#「九月廿七日」に二重傍線]
晴、ゆうぜんとして、或はぼうぜんとして。
Sが卑怯な我儘な振舞をするので、腹が立つて打つた、あゝ何故にSを打つたのだ、私自身を打つべきではないか、敬君よ、早くSを連れていつてくれたまへ、彼は私をして私自身をあまりにまざ/\と見せつける!
近郊散歩、Sを連れて。
昨夜の山頭火狂乱の跡を観て歩く、誰も知らない、知つてゐるのは山頭火自身だけだ!
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・むすめの竿がやつと熟柿へとどいて青空
・住む人はない秋ふかい花をもらふ
・さうぼうとして街が灯れば木の葉ちる
足音ちかづくよな、柿の葉おちるわおちるわ
・をとことをんなと月が冴えすぎる空
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九月廿八日[#「九月廿八日」に二重傍線]
晴、当面の仕事は何か、――まづ書債を果たす、これだけでもサツパリした。
午前樹明徃訪、午後は樹明来
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