気分もそんなだつた。
一昨日の汚れものをやつと片づける、鶏肉の脂肪でズル/\するので閉口した。
何となくいら/\する日である、心持が険しくなつて、犬のぢやれつくのも癪にさわる。……
自己省察[#「自己省察」に傍点]。
人間の一生、自我の生活。
私はつつましく、きよく、あたゝかく生きてゆく外はない。
身心不調、発熱倦怠。
Sの弱虫め、猫にとびつかれて悲鳴をあげた。
S、お前は我儘だぞ、かしわ汁をかけない飯をたべないとは。
九月廿六日[#「九月廿六日」に二重傍線]
雨、よくねむれた、暗いうちに起きる。
Sの我儘が私の我儘だ、彼の姑息が私の姑息ではないか、もつと強く、もつと愿に、もつと朗かであれ。
うつら/\として悪夢の連続。
私はよく寝るが――眠るのではないが――Sもよく寝る、寝るより外ないからでもあらうが。
五時頃、めづらしくT女来庵、待ちあぐんでゐると、樹明君とIさん来庵、むろん、酒も下物も。
とろ/\、どろ/\、そしてぐう/\!
よく飲んでよく寝た、極楽、地獄、ヨカヨカ。
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明けないうちから藁うつくらしの音がはじまつた
・ゆふべはあんまりしづかなたわわな
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