秋雨
 嵐のかげのしろ/″\と韮の花
・日向ごろりとヱスもわたしも秋草に
・あらしのあとの水音が身のまはり
・月へ汲みあげる水のあかるさ
・月のさやけさ酒は身ぬちをめぐる
・月が酒が私ひとりの秋かよ
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 九月廿二日[#「九月廿二日」に二重傍線]

秋日和、天高く雲遊ぶ、身心不調、沈欝せんすべなし。
Sを連れて近郊散歩、彼は私よりもさびしがりやだ、途中でまた行方不明になつてしまつた、何しろ誘惑物が多いから、田舎者の彼はきよろ/\して、ちつとも落ちついてゐない、……どうしても見つからない、困つたことになつた、……夕方また街へ出かけて探したが駄目だつたので、がつかりして帰庵、……と、彼はけろりとして戻つてきて、がつ/\飯を食べてゐる。……
ふけるほどよい月になつた、よくねむれた。
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・秋風の腹たててゐるかまきりで(再録)
・かまきりよいつ秋のいろがはりした
・糸瓜ゆつたりと朝のしづくしてゐる
・重荷を負うて盲目である
・家いつぱいの朝日がうらの藪までも
・風に眼ざめてよりそふ犬の表情で
・這うてきたのはこうろぎでぢつとしてゐる
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