り起きたり。

 九月十四日[#「九月十四日」に二重傍線]

曇、よいたより、ありがたかつた。
鴉が啼いて私を淋しがらせる、終日読書。

 九月十五日[#「九月十五日」に二重傍線]

曇、雨、秋祭。
田舎祭の追憶はかなしくもなつかしい。
○酒が飲みたくなくなつた、そして飲まずにはゐられない、地獄である。
今夜も地獄の亡者として、酔うて歩いた、辛うじて戻つて寝た。……
○味ふ酒[#「味ふ酒」に傍点]でなければならないのに酔ひたい酒[#「酔ひたい酒」に傍点]なのだ、それはまつたく致命的な酒[#「致命的な酒」に傍点]である。

 九月十六日[#「九月十六日」に二重傍線]

曇、晴れてお祭日和となつた、お宮の大[#「大」に「マヽ」の注記]鼓が鳴つてゐる、私は門外不出。
樹明来、行商の話に花が咲いた、それはまことに小つぽけな花だが、私の花でなければならない。
[#ここから2字下げ]
・枯れそめて赤いのは曼珠沙華
 庵もすつかり秋のけしきの韮の花
[#ここで字下げ終わり]

 九月十七日[#「九月十七日」に二重傍線]

曇、また雨になつた、身心沈静、あれこれ整理する。
畑仕事、大根と蕪とを播く。

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