晴、安眠熟睡の幸福をめぐまれた。
まことに好季節、百舌鳥が啼く、萩が蕾んだ、曼珠沙華が咲きだした。
九月十二日[#「九月十二日」に二重傍線]
Kさんから手紙、清丸さんから本、どちらも好意そのものゝやうでうれしかつた。
黙壺来、黙壺君はフアンのフアンだ、酒、牛肉、豆腐、※[#「飲のへん+乍」、138−14][#「※[#「飲のへん+乍」、138−14]」に「マヽ」の注記]、そして銭――それらはすべて彼が私に投げかける温情の断[#「断」に「マヽ」の注記]だつた。
樹明来、めづらしくまじめで、彼らしくない彼であつた、さびしい彼だつた。
払へるだけ払つて、飲めるだけ飲んだ、とう/\※[#「飲のへん+乍」、139−3]代を交番に行つて借りた、いや保證して貰つた!
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・がちやがちやよ鳴きたいだけ鳴け
・お彼岸のお彼岸花をみ仏に
・何だか腹の立つ秋雨のふる
・秋雨の一人で踊る
・雨がふるので柿がおちるので
[#ここで字下げ終わり]
九月十三日[#「九月十三日」に二重傍線]
雨、よく降つた、井戸がいつぱいになつてあふれたほど。
ひとりひっそり、読んだり考へたり、寝た
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