字下げ]
・きら/\ひかつて売り買ひされるよう肥えた魚
 孫の手をひきお寺まゐりのさげてゐるはお米
・月からこぼれて師走の雨のぬくい音
・触れると散るまへの櫨紅葉かな
 其中一人にして冬ごもり
・小春日のさせば障子をあるく虫のかげ
[#ここで字下げ終わり]

 十二月廿四日[#「十二月廿四日」に二重傍線] 晴、めつきり冬らしい寒さとなつた。

安静、感謝、知足安分の心境。
健がボーナスのお裾分をしてくれたので、さつそく払へるだけ、払ふべきものは払ふことが出来た、そして買物もあるし、温泉にも浸りたいので、山口へまで出かけたが、からだのぐあいが悪くて、ほんたうに閉口した、いつも食べる二十銭の定食も食べたくなかつた、ほどよい宿に泊つてもいゝのだが泊りたくなかつた、おそくなつて、やつと帰庵して、すぐ寝た。……
冷酒をあほつたからであらう、餅菓子を食べたからでもあらうか、……とにかく弱つた、……老衰をひし/\と感じた、感じないではゐられなかつた、……そして考へたことである、山頭火は其中庵にぢつとしてゐるより外はない[#「山頭火は其中庵にぢつとしてゐるより外はない」に傍点]、口腹の慾を断ち、人間の
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