句といふものは、人間といふものは。
今の今[#「今の今」に傍点]、こゝのこゝ[#「こゝのこゝ」に傍点]、私の私[#「私の私」に傍点]。――
ちよつと街まで、午前、ちよつと駅まで、午後、夜は読書。
無事平安の一日だつた、めでたし、めでたし。
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・どうにもならない空から青柿
・若竹はほしいままに伸びる炎天
・雨を待つ風鈴のしきりに鳴る
・炎天のはてもなく蟻の行列
・身のまはり草の生えては咲いては実る(改作)
[#ここで字下げ終わり]

 七月十四日[#「七月十四日」に二重傍線]

曇、おかげでよいお盆が迎へられました。
鬼百合を活ける、力強い花である。
句稿をおくる、かなり句作するのだが、おくるとなれば、さても少ない、自信のある句が少ないのである。
あるだけの酒を飲む、街を歩いても、友を訪ねても、ちつとも慰まない、戻つて寝る、――まことにあぶない一歩だつた。
△父と子との間は山が山にかさなつてゐるやうなものだ(母と子との間は水がにじむやうなものだらう)、Kは炭塵にまみれて働らいてゐる、彼に幸福あれ。
雨乞が方々で行はれる、こゝでも今夜裏山で火を焚くさうな。
[#ここか
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