酔ふ、虚無が酔ふ[#「虚無が酔ふ」に傍点]、踊らう[#「踊らう」に傍点]、踊らう。
肺炎再発の気味、生死去来は御意のまゝ!
何か食べたいな[#「何か食べたいな」に傍点]――これが人間の本音かも知れない。
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生死去来
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 七月十二日[#「七月十二日」に二重傍線]

曇、やつと雨になつた。……
慈雨、喜雨、生命の雨だ、降れ降れ、降つてくれ。
何とうれしい手紙が、それはNKから、そして地獄がすぐ極楽だ!
△食気と色気の二つが人間生活の根源だつた。
飯のあたゝかさ、うまさ、ありがたさ。
よく飲んでよく食べて、ぐつたりとしてゐるところへ黎々火君ひよつこり来庵、酒と米とを持つて、――はだかで、かやの中で飲んだり食べたり。
彼の憂欝はよく解る、私も老来かへつて惑ひ多し。
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父と子との間
  ――(Kをおもふ)――
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 七月十三日[#「七月十三日」に二重傍線]

雨、曇、晴。
朝の四時の汽車で黎々火君は出立出勤。
△過去一切の悪業を清算する時機が来たやうだ。
酒といふものは、飯といふものは、銭といふものは、
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