ゐる(自弔)
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 七月十日[#「七月十日」に二重傍線]

晴、曇、夕立がきさうだつたが、バラ/\と落ちたゞけ。
昨日も今日も終日読書。
一杯やりたいが、それどころぢやない、一椀があやしくなつた!
周囲が(私自身も)コセ/\してゐるのが嫌になる、もつとユツタリとしたいものだ。
△……生きてをれば生きてをるがために、いひたくない事をいひ、したくない事をしなければならない、……生きてゐたくないと思ふ。
三八九復活の外はない、やつぱり謄写刷がよい。
肋膜の工合が変だ、うまく死ねないものか!
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・食べる物がない涼しい風がふく
・どうせもとのからだにはなれない大根ふとる
 生えて移されてみんな枯れてしまつたか
・酒と豆腐とたそがれてきて月がある
・青田風ふく、さげてもどるは豆腐と酒
・食べる物はあつて酔ふ物もあつて草の雨
[#ここで字下げ終わり]

 七月十一日[#「七月十一日」に二重傍線]

晴、曇、晴、そして待ちに待つ手紙は来ない。
今日は食べる物がないから砂糖湯を飲む、そして胡瓜を食べる。
米屋は米を貸してくれない、酒屋は酒を飲ましてくれた!

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