た、裸体で水中を歩くのは愉快だつた、船のおかみさんが深切にも辨当を食べる用意をしてくれました。
帰途、酒と豆腐とを買つて(三人で買へるだけ、金九十五銭!)、ゆつくり飲んだ、それは「豆腐をたべる会[#「豆腐をたべる会」に傍点]」第一回でもあつた、とかうして七時解散。
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とんぼふれても竹の皮のおちる
・とぶは萱の穂、おちるは竹の皮
・いつもの豆腐でみんなはだかで
蝉なくやヤツコよう冷えてゐる
したしさははだかでたべるヤツコ
・風はうらからさかなはヤツコで
・金借ることの手紙を書いて草の花
・朝蝉、何かほしいな
・夕蝉、かへつてゆくうしろすがた(黎々火君に)
・ともかくもけふまでは生きて夏草のなか
・ぽとりぽとり青柿が落ちるなり
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七月九日[#「七月九日」に二重傍線]
晴、降ればよいのに、降りさうにもない。
甘草、またの名は忘れ草を活ける、百合よりも野趣がある。
蟻地獄といふもの、何だか気味悪い存在だ。
ちよつと街のポストまで、そしてちよつと一杯!
夕蝉なけばまた一杯やりたいな!
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・風がふきぬけるころりと死んで
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