野に満ちてゐる。
ちよつと街まで出かける、心臓の弱さがハツキリ解る、ぽつくり徃生こそ望ましい。
夕方、樹明君が来た、酒と下物とを持つて、――よろしくやつてゐるところへ、ひよこりと黎々火君がやつて来た。
黎々火君をそゝのかして街を歩く、持つてゐるだけ飲んでしまつた(といつてもみんなで一円五十銭位!)、酔ふ、とう/\野菜畑で一寝入した。……
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・すゞしい風のきりぎりすがないてとびます
・炎天、なんと長いものをかついでゆく
・父が母が、子もまねをして田草とる
・炎天、きりぎりすはうたふ
・朝の水があつて蜘蛛もきて水のむ
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 七月八日[#「七月八日」に二重傍線]

晴、とても暑い日だつた、百度近くだつたらう。
朝蝉が鳴く、朝酒がほしいな、昨夜の酒はだらし[#「だらし」に傍点]なかつたけれど、わるい酒ではなかつた、ざつくばらんな酒[#「ざつくばらんな酒」に傍点]だつた。
八時頃、約を履んで樹明来、釣竿、突網、釣道具、餌、そして辨当まで揃へて。
三人異様な粉[#「粉」に「マヽ」の注記]装で川へ行く、途中コツプ酒、与太話、沙魚は釣れなかつたが蝦をすくう
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