す、……と友へ書いた、私はやうやく落ちついた、過去の一切の罪障を清算しなければならない。……
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・かうしてながらへて蝉が鳴きだした
・藪を伸びあがり若竹の青空
・若竹ゆらゆらてふてふひらひら
・いつぴきとなりおちつかない蠅となつてゐる
・炎天の萱の穂のちるばかり
・ま昼ひそかに蜂がきては水あびる
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七月七日[#「七月七日」に二重傍線]
晴、新暦では七夕、一年一回の逢瀬は文字通りに一刻千金だらう!
朝は涼しいよりも寒い、そして日中は土用よりも暑い。
一雨あつたら、人よりも草木がよろこぶだらう、田植の出来ない地方、田植しても枯渇する地方のみじめさ、気の毒さ。
身心ます/\平静、山頭火は山頭火であれ。
若竹のすなほさ、のびやかさ、したしさ。
やつと郵便がきた、北朗君がよく覚えてゐて鈴を送つてくれた、忘れてゐたゞけ嬉しかつた、「松」「地に坐る者」などそれ/″\ありがたい。
嫌な手紙を書いた、それは書きたくない、書いてはならない手紙だつた、生きてをれば、生きるために、かういふ手紙を書かなければならないのだ。
雨乞の声[#「雨乞の声」に傍点]が山
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