ざくらのかげがながくすずしく
木かげがあれば飴屋がをれば人が寄つて
・ま夏ま昼の火があつて燃えさかる
大橋小橋、最後のバスも通つてしまつて螢
・バスの※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]花の、白百合の花のすがれてはゐれど
緑平老に
・あれからもう一年たつた棗《ナツメ》が咲いて
[#ここで字下げ終わり]
六月三十日[#「六月三十日」に二重傍線]
晴、曇、蒸暑いこと。
△水はともかく、ビールのやうな句も出来ない、出来るのは濁酒のやうな句だ、ウソはないけれど。
ごろ/\と寝たり起きたり、あゝ退屈だ、もつたいないが。
坐敷にぱたりと音を立てゝとかげ殿の散歩!
とんぼがあたまのてつぺんにとまりました。
蝉の声です、初耳です、もちろんみん/\蝉です。
今日も焼酎を呷ることを忘れなかつた、といふよりも、呷らずにはゐられなかつた、飲むときは胸が痛いほど苦しい、しかし飲んでしまへば何となくうれしくなる。……
ウソイツハリのない自殺的行為だ。
△歩けなくなつた山頭火、みじめな山頭火だ。
青紫蘇の香のよろしいこと。
△心境はかはる、気分はうつる、――生きた
前へ
次へ
全94ページ中72ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング