しで歩けばふるさと
・さみだるるやはだしになりたい子がはだしとなつて
・なんとよい月のきりぎりす
・はだかで筍ほきとぬく
・竹にしたい竹の子がうれしい雨
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六月廿七日[#「六月廿七日」に二重傍線]
曇、よく睡れないので明けきらないうちに起きた、水鶏(?)がしきりに啼く、あはれな声で。
草苺のうつくしさよ。
朝酒のよろしさ、一人のよろしさ。
ほろ酔機嫌で、床屋へ、湯屋へ、酒屋へ、質屋へ、仕立屋へ、そして防府へ行つた。
三田君の宅に泊めて貰ふ、E君にもI君にも逢ふことは逢ふたが、もう彼等と私との間には友情が残つてゐない、三田君は特別だ、彼は世間的には失敗した方だけれど、人間としてのあたゝかさを失つてゐない、彼のあたゝかさは沸かし[#「沸かし」に傍点]さ[#「さ」に「マヽ」の注記]あたゝかさ[#「あたゝかさ」に傍点]でなくして湧くあたゝかさ[#「湧くあたゝかさ」に傍点]だ。
月はよかつたが蒸暑い夜だつた、飲みすぎたので寝苦しかつた。
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・ならんで竹となる竹の子の伸びてゆく雨
・竹となりゆく竹の子のすなほなるかな
・山から山がのぞいて梅雨晴れ
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