窓に近く筍二本、これは竹にしたいと思ふ、留守にTさんが来て抜かれては惜しいと思つて、紙札をつけておく、『この竹の子は竹にしたいと思ひます 山頭火』
昨夜の酒は私にはよかつた、今日は昨日よりも落ちついて、そして幸福である。
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・ここでもそこでも馬を叱りつつ田植いそがしい
・叱つても叱られても動かない馬でさみだれる
・人がきて蠅がきて賑やかなゆふべ
・どうにもならない人間が雨を観る
・負うて曳いて抱いてそして魚を売りあるく(彼女を見よ)
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六月廿六日[#「六月廿六日」に二重傍線]
梅雨曇、まづ玉葱と筍とを茹でて友を待つ。
昨夜もよく眠れたが、狂犬に追つかけまはされた夢を見た、その狂犬は煩悩だつたらう。
たよりいろ/\、なかんづく、緑平老からの手紙は涙がこぼれるほどうれしかつた。
晴れてきて蒸暑くなつた。
街へ、買物かず/\、米と醤油と買へたのが何よりも有難かつた。
友に与へた手紙のうちに、――
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老来なか/\に思ひ惑ふことが多くて、ます/\グウタラとなり、モノク[#「ク」に「マヽ」の注記]サとなりつゝあります、どうで
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