廿三日」に二重傍線]
昨夜もよく睡れなかつたので、何となく身心が重苦しいけれど、落ちついたことに間違はない。
学校に樹明君を訪ねて、先夜のお詑とお礼とをいふ、君はまつたく病人だつた、身心共に。
△酒はよいが、アルコールがいけないのだ、人そのものは申分ないのに意志が弱いのだ。
君よ、しつかりして下さい、私もしつかりと生活する。
空[#(ラ)]梅雨の暑苦しさ[#「空[#(ラ)]梅雨の暑苦しさ」に傍点]、それは私たちの身心のやうな!
放下着、そしてまた放下着。
行雲流水、無礙無作、からりとして生きて行け。
田植がはじまつた、毎日、朝から晩まで泥田を這うて働らく人々に対して、私は恥づかしく思はないではゐられない。
豚が食べてゐる、クン/\鼻を鳴らして――豚は食慾そのものであるやうに感じさせる、食べて肥えて、そして殺される豚だ。
雀の子がうまく飛べない、畦から畦へと餌をあさつてはゐるが――多分、彼はみなしご[#「みなしご」に傍点]だらう。
夕方、ばら/\と降つた、なか/\降らない梅雨だ。
風呂を飲んでしまつた、澄太君に申訳がない、どうでもかうでも風呂代だけは捻出して、その野風呂にはいつて貰はな
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