かつた、馬鹿、阿呆、頓間、間抜。
死に[#「に」に「マヽ」の注記]も死ねないやうになりつゝあつたのだ、情ない。
樹明君が死にそこなつた私を案じて給仕をよこした、ありがたい志だつた。
△暴風一過の境地[#「暴風一過の境地」に傍点]である。
いぬころぐさを活ける、去年をすぐおもひだす、おどり子草も咲いてゐる、すぐまた一昨年のことをおもひだす。……
ぐみの実、草いちごの実、おもひでがあまりに多い。
虫が鳴く、こうろぎよ。……
虫が歩く、油虫だ。
△近眼と老眼とがこんがらがる、躓き易くなつて老を感じる。
………………………………………………………
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・ま昼の花の一つで蝶々も一つで
・かどは酒屋で夾竹桃が咲きだした
・朝風の草の中からによこりと筍
・ゆふ空ゆたかに散りくるはあざみ
・ほんに草の生えては咲く(改作)
うらは藪で筍によきによき(其中庵風景)
・水田たたへてつるみとんぼがゆふ日かげ
・雲雀が空に親子二人は泥田の中
・鍋や茶碗や夜つぴて雨が洗つてくれた
かういふ句も
抱かうとして夜の雨ふる
[#ここで字下げ終わり]
六月廿三日[#「六月
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