六月十一日[#「六月十一日」に二重傍線]
梅雨日和、明日から入梅だ。
枇杷を食べる、私には初物だ、これは恐らく、昨夜の宴会の残物だらう、といつては持つてきてくれたT子さんにすまないけれど。
だん/\晴れる、雨後の風景はまことにあざやかなものである。
T子さん帰る、樹明君も帰る、あとは私一人でしづかなこと、其中一人で十分だ(半人では困るが二人三人でも困ります)。
雑草の中から伸びてゐた葱坊主、それは野韮でもないし、ラツキヨウでもないし、何だらうと考へてゐたが、玉葱だつた、今年捨てた屑根から芽生えてきたのだつた、小さい玉が三つ、これでも私の味噌汁の実にはなる、いや有難う。
大根菜間引、洗つて干す、あす新漬にするために。
奴蜘蛛を観察する、なか/\面白い。
虫を殺すことは不愉快だ、しかし殺さなければならない虫。
駅へ砂吐流君を出迎ふべく行[#「行」に「マヽ」の注記]かける、途中、樹明を訪ねて訳を話す。
△赤と黒との接触を観察した、赤い蝶と黒い蝶との交尾行動!
砂君と共に、もう一度、樹明徃訪、二十年振の昔話、それから庵で、三人でよい酒うまい酒を飲む、砂君宿泊。
よく飲みよく話しよく寝た
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