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・歩いても歩いても[#「歩いても歩いても」に「出ても戻つても」の注記]草ばかり
・雑草やたらにひろがる肉体
・てふてふとんでも何かありさうな昼
・濡れて、てふてふも草の葉のよみがへる雨
・虫はなんぼでもぶつかつてくる障子の灯かげ
・ここにも工場建設とある草しげる
・土に描いて遊ぶ子のかげもむつまじく
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 六月十二日[#「六月十二日」に二重傍線]

早朝、砂君を見送つて駅へ。
砂君はまろい人[#「まろい人」に傍点]だつたが、二十年の歳月が君をいよ/\まろくした、逢うて嬉しい人だ。
何だか遣りきれなくて飲む、酔うて辛うじて戻つて寝た。
或る時は善人、或る時は悪人、或は賢、或は愚、是非正邪のこんがらがるのが人間の生活だ。
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・てふてふよつかれたかわたしはやすんでゐる
・ふつと逢へて初夏の感情(追加)
・青空したしくしんかんとして
・朝じめりへぽとりと一つ柿の花
・けさはじめての筍によつこり
・こんなところに筍がこんなにながく(再録)
・あひゞきの朝風の薊の花がちります
・酔ざめはくちなしの花のあまりあざやか
[#ここ
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