ウソかマコトか、ウソからマコト、マコトからウソ。
△桂子さんのちまき[#「ちまき」に傍点]が来た、重いな、グロテスクな食物だ、屈原の味か、薩摩隼人の味か、ようく噛みしめろ。
入浴、数日来のわだかまりを流す。
山へ、つつじを折つてきて仏様に供へる。
しづかな日だつた、遊蕩気分を払拭した。
ほんとに熟睡した、近来にないことだ。
六月十日[#「六月十日」に二重傍線]
曇、梅雨入前、午後すこし降つて晴。
時の記念日、とまつた時計を時計屋へ持つてゆく、ネヂがゆるんだためで、すぐに直してくれた、タヾで。
なまけもの、きまぐれもの、ぐうたら、等々と自分を罵つた、どうもこれは直らない、ネヂがゆるんだのではあるまい、ネヂがないのだらう!
郵便はとう/\来なかつた、さみしい日だ。
△ゆすら桃、通りかゝつた垣根から二粒三粒つまんでたべて、遠い少年の夢を味つた。
夾竹桃がもう咲いてゐる、南国の夏の色と姿だ。
更けて、跛を曳きつつ、犬に吠えられつつ、樹明泥酔して来庵、自転車々々々と繰り返す、生酔本性とはこれだらう、宥め賺して、やつと寝させる、……すぐ大鼾だ!
夕暮、クロトリを聴く、ぢつと耳傾けてゐると、そ
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