れて、なんにもないけどちしやなます(友に)
もう春風の蛙がとんできた(再録)
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自殺是非
(などゝいふなかれ)
自殺の可否は自殺者にあつては問題ぢやない。
死にたくて自殺するのでなくて、生きてゐたくないからの自殺だ。
生の孤独や寂寥や窮迫やは自殺の直接源[#「源」に「マヽ」の注記]因ではない。
自殺は最後の我儘[#「最後の我儘」に傍点]だ。
酒と句とが辛うじて私の生を支へてゐた[#「酒と句とが辛うじて私の生を支へてゐた」に傍点]。
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六月九日[#「六月九日」に二重傍線]
三時半には起きた、昨夜の後始末。
うつ木の花、はかない花だ、活けてもすぐ散る。
残つたゞけ飲む、飲まずにはゐられない、といふよりも一滴も残しておけないのが酒好きの酒飲みだ。
性慾と食慾[#「性慾と食慾」に傍点]、食慾は満たさないと死ぬる、性慾は抑へてゐても生きてゐられる、そこに私共の関心がある。
△技巧[#「技巧」に傍点]はそれを技巧と感じさせないところにそのうまさがある。
茄子苗を見つけた、すぐ植ゑる、どうぞついてくれ。
野韮の花、坊主花。
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