ナイシヨウ/\!
・死んでしまうたら、草のそよぐ
・死ぬるばかりの、花の赤いかな
・からりとしてしきりに死が考へられる日
・死なうとおもふに、なんとてふてふひらひらする
 夏野、犬が走れば人も走つて
・朝風のきりぎりす大きうなつた
・ゆふべあかるい草の葉で蝶はもう寝てゐる
[#ここで字下げ終わり]

 六月八日[#「六月八日」に二重傍線]

晴、けさはゆつくりと五時すぎるまで寝床の中。
△自殺是非[#「自殺是非」に傍点]について考へる。――
詩外楼君から、桂子さんから来信、桂子さんからのそれはなか/\興ふかいものだつた。
大事に育てる茄子の一本が枯れた、根切病、詮方なし。
額が出来た、井師筆の其中一人[#「其中一人」に傍点]、ありがたい。
焼酎一杯、むろんカケで、その元気で学校へ寄る。
T子さん来庵、酒とサイダーと肴とを持つて、やがて樹明君も来庵。
それから歩く、私一人で、そしてヘト/\になつて帰る、途中無事で、ヤレ/\。
[#ここから2字下げ]
・風ひかる、あわたゞしくつるんでは虫
 めくらのばあさんが鶏に話しかけてゐる日向
・たつた一人の女事務員として鉢つつじ
 たま/\たづねてく
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