米を貰ふ、ありがたし。
敬治君は予想した通りに来ない、山口から大田へだつたらう、それがよろしい。
昨日も今日も句なし、それもよろしい。
何といふ鳥か、夕まぐれを切なさうに啼く。
虫が、いろんな虫がいそがしく動いてゐる。
山頭火の胃袋は何とデカイかな(その実例)。
[#ここから1字下げ]
朝食―お茶漬さら/\三杯、手製の新菜漬で。
昼食―小鰯を焼いて独酌一本(二合入)、温飯四杯。
夕食―うどん三杯、飯二杯、蕗の佃煮で。
[#ここで字下げ終わり]
五月廿九日[#「五月廿九日」に二重傍線]
よい月夜、寝苦しい寝返りを繰り返してゐるうちに、いつとなく夜が明けてしまつた、けさは早起の中の早起だつた。
しかし、二時頃だつたらう、二声三声、ほとゝぎすが啼いたのはよかつた、私には初音だつた。
今日も好天気、歩きたいな、行きあたりばつたりの旅がしたい。
たよりいろ/\、澄太君の温情、ありがたしともありがたし。
学校に樹明君を訪ねる、それから街を歩いてゐるうちに、ガソリンカーに乗つて山口へ、――小人、銭を持つて罪あり、――酔うて歩けばすつかり夏だ。
鈴木の奥さんを訪ねてビールをよばれる、湯田の湯はよ
前へ
次へ
全94ページ中41ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング