ふので、彼と彼女は同道して出て行つた、彼の旅に幸あれ、彼女の生活に幸あれ。
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・誰も来ない蕗の佃煮を煮る
・蕗つめば蕗のにほひのなつかしく
・蕗の香のしみ/″\指を染めた
・初夏の、宵月の、何か焦げるにほひの
・こゝまではあるけたところで熱い温泉《ユ》がある(山口へ)
・あかるくあつくあふれる湯にひたりおもひで(湯田入浴)
・惜しみなくあふるゝよながるゝよ(途上即事)
・街からついてきた蠅で打つ手は知つてゐる
ゆふべおもむろに蠅は殺された
・打つ手を感じて蠅も私もおちつかない
草が青うてどこかの豚が出て遊ぶ
・よい湯あがりのはだかであるく雑草の風(追加)
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五月廿四日[#「五月廿四日」に二重傍線]
すばらしいお天気のつゞくことである、すこし急いで歩けば汗ばむほどの暑さとなつた。
茄子の支へ竹を拾ふべく椹野河原へまで出かける(近所にもあるけれど個人所有の山へはいるのはうるさいから)、月見草がうつくしく咲いてゐた、土手の葉桜もうつくしかつた。
帰途、魚市場の前を通りかゝつて、鯖を一尾買うて戻つた(私が生魚を買つたのは、今年はこれが最初
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