ろし。
朝は、とりわけて初夏の朝はよろしいかな。
うれしいたよりが方々から、そして意外のよろこびがあつた!
山口へ行く、いつぞや見つけておいた食卓――それは私が食卓として用ひるので、安物の小机――を買ふために、そして湯田で入浴するために、しかしその机はもう無かつた、千人風呂はあつくあふれてゐたけれど。
酒一杯、うどん一杯、十五銭なり、これは昼食、見切本のお惣菜のこしらへ方十銭、菜葉弐把五銭なり、これはお土産。
もう戸外は暑い、今日は一日ゆつくり遊ぶつもりだつたが、三時には戻つてきた、バス代を倹約して半分は歩いた、途上、感じのよい若いマダムを見た、山口小郡間のバスが乗心地のよいやうに、気持がよかつたことです!
暮れるころになつて、約の如く樹明来庵、例の如く飲んで食べる(念のために断つておくが、食べて飲むのではない)それから両人共理髪、ちよいと、ちよいとしたところを見て[#「見て」に傍点]帰庵。
まだ酒が残つてゐる、その酒を飲んで、飯を食べて、そして寝る、樹明はいびき、わたしは眠れない。
もう一時過ぎてゐたらう、T子さんが来た(仕事がすむのは毎夜今頃ださうな)、樹明君は二時の汽車に乗るとい
前へ 次へ
全94ページ中34ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング