る勿れ[#「有仏のところ止まる勿れ」に傍点]、無仏のところ走過せよ[#「無仏のところ走過せよ」に傍点]、――私は今、この話頭に自から参じてゐる。
もううす暗くなつて、農学校の給仕さんが酒徳利をさげてきた、樹明来の予告である、間もなく樹明来、自分で飲みたいよりも私に飲ませる心いきはよく解る、よく解るだけ酔へない、胡瓜と酒とは食べて飲んだが。
干大根は煮そこなつた、伽羅蕗はうまくできるらしい。
蛙かやかやこやこや、ころころ、げろげろ。……
よう寝た、さすがにアルコール大明神の効験はいやちこ也。
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  (未定稿)(生みの苦しみ)
 (わたしの)窓へ糸瓜の蔓をみちびく
 (だん/\畠の)麦刈ればそこには豆が芽ぶいてる
 (夜の机の)これでも虫であつたか動いてる
・風の夜の虫がきて逃げない
・風鈴鳴ればたんぽぽ散ればとんぼ通りぬける
・触れると死んだまねして虫のいのち
・蜘蛛はほしいままに昼月のある空
 蜂もいそがしい野苺咲いた
[#ここで字下げ終わり]

 五月廿三日[#「五月廿三日」に二重傍線]

今日はすばらしい好晴、清明の気が天地にあふれてゐる、身心ほがらかにしてか
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