ほど好意が持てた。
小郡のやうな町でも、八百屋の店頭に苺や枇杷がならべられて、行人の食指を誘ふ。
△酒の量りのよさわるさが妙に神経にこたえる、これについては興味ふかい随筆が書けるよ。
入浴のついでに工場の冬村君を訪ねる、二三日前に父となつた[#「父となつた」に傍点]といふ、その娘は不幸な人間として生れてきたが、どうか不幸でないやうにと祈らずにはゐられない。
結婚はもう Adventure でなくて Business となつたのである、Business でなければならないのである。
[#ここから2字下げ]
・金魚売る声も暑うなつたアスフアルト
 いやな薬も飲んではゐるが初夏の微風
・なんと[#「なんと」に「いかに」の注記]若葉のあざやかな、もう郵便がくる日かげ
 若葉めざましい枯枝をひらふ
・郵便もきてしまへば長い日かげ
・湯があふれる憂欝がとけてながれる(改作)
[#ここで字下げ終わり]

 五月廿二日[#「五月廿二日」に二重傍線]

とてもよいお天気、小鳥も草も人間もよろこぶ。
何とはなしに憂欝になる、病気のためか、銭がないためか、お天気があまりに好すぎるためか、……やつぱり把握すべ
前へ 次へ
全94ページ中31ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング