るのだ。
生活事実、その中に、その奥に、その底に人生の真実、自然の真実がある。
[#ここから2字下げ]
・誰もたづねて来ない若葉が虫に喰はれてゐるぞ
・ひよいと穴から、とかげかよ
・雑草が咲いて実つて窓の春は逝く
・ねむれない私とはいれない虫と夜がながいかな
・夜ふけてきた虫で、いそいで逃げる虫で
[#ここで字下げ終わり]
五月二十日[#「五月二十日」に二重傍線]
雨、よい雨、風、わるい風、身心すなほ、しづかな幸福。
時化になつた、米もなく石油もなくなつてゐるが、そしてそれを買ふだけの銭は持つてゐるが、とても出かけられない、ひとりしづかに寝床に横は[#「横は」に「マヽ」の注記]つて読書。
もう一週間ほど誰も来なかつた、私からはちよいちよい出かけたが。
夕方、樹明来、米持参、この米は今日の場合、とりわけ有難かつた、君は健康を害して酒が飲めないので、お茶をのんで閑談、幸に青蓋人おくるところの、せ、ん、べい、があつた。
といふやうなわけで、米代が浮いたので、――といつても五十銭だが――風雨を衝いて街へ、酒と石油を買うて戻つた、雨風でびつしよりになつた、いや御苦労、々々々。
酒はウチノア
前へ
次へ
全94ページ中29ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング