らないで曇、曇つてゐたが晴となつた。
昼食後ふと大田行を思ひ立つた、敬君とゆつくりよい酒を飲みながら話したくなつたのである、学校に樹明君を訪ねて、念のために電話で都合を訊ねて貰つたら、出張で不在といふので止めた(かういふ場合、電話――文明の利器に感謝しないではゐられない)。
横臥読書。
蕗を摘んで、お菜をこしらへる、茎もうまいし葉もうまい。
入雲洞君から借りた「雲水は語る」を読む、前の著作と重複するところはあるが、面白く読ませるところに蓬州和尚の腕がある、大に飲んで大に書いて下さい(もう書きすぎてゐるから!)。
可愛らしい鼠がそこらをかけまはつてゐる(これは不思議、いつやつてきたのだらう、これで其中庵も家並の家になつた)、上手な鶯が窓ちかく啼く、なつめの若葉、桐の花、密[#「密」に「マヽ」の注記]柑の蕾。……
雑炊を味ふ、雑草を眺めつつ!
あやめを床に、いばらを机上に活ける、どちらもよい。
△業《ゴウ》が残つてゐる(死にそこなうた、死ねなかつた)、といふことは、仕事がある、成し遂げるべきものがある、といふことだらう。
△木曽路で句作のいとぐちがやうやくほぐれかけたが、飯田で病んでいけな
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