くなつた、そして帰来少しづゝほぐれる。
△捨てるも捨てないもない[#「捨てるも捨てないもない」に傍点]、さういふ考へを捨ててしまへばそれでよいのだ、即今の這箇[#「即今の這箇」に傍点]に成りきればそれでよいのだ。
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・あさのみちの、落ちてゐる梅の青い実の
・あほげば青梅、ちよいともぐ
・病めば考へなほすことが、風鈴のしきりに鳴る
 をさないふたりで、摘みきれない花で、なかよく
・ほんにしづかな草の生えては咲く
・ひらかうとする花がのぞいた草の中から
・芽ぶいて若葉して蓑虫は動かない
・いちはやく石垣の茨は咲いた校長さんのお宅
 声をそろへて雨がほしい青蛙はうたふ
・打つ手を感じ逃げてゆく蚊の、寝苦しい
・灯火、虫はからだをぶつつける
・生えて伸びて咲いてゐる幸福
[#ここで字下げ終わり]

 五月十九日[#「五月十九日」に二重傍線]

頬白が晴々と囀つてゐる、誰かを、何物かを待つてゐる。
考へること、読むこと、書くこと、……歩くこと。
人生は五十からだ、少くとも東洋の、日本の芸術は!
曇つて降りだしさうになつたが、なか/\。
昼酌をやりながら、といふよりも、ほうれ
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