…
もう茨の白い花がちらほら、セルを着て歩く若い女の姿は悪くない、初夏風景の一つ。
垣根にばら[#「ばら」に傍点]、道べりにはあざみ[#「あざみ」に傍点]が咲いてゐた、私はちつとも迷はないで後者を採つた、一輪ざしにさすために。
しづかなるよろこび[#「しづかなるよろこび」に傍点]。――
午後は湯屋へ、そしてうどん玉を買うて戻る。
初めて蚊帳を吊つた。
梟が啼きつゞける、根気のよい鳥だな。
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寝床までまともにうらから夕日
青葉からまともな陽となつて青葉へ
・これは母子草、父子草もあるだらう(述懐、子に)
夜ふけて餅を焼いて
ふくれて餅のあたたかさを味ふ
・麦畑へだてゝとんとん機音は村一番の金持で
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五月十八日[#「五月十八日」に二重傍線]
予期した通りの雨、しかしあまり降らない。
ありがたい手紙やら小包やら。
青蓋人君からは豊川稲荷の玉せんべい(たゞし実際は、せんべいの断片[#「せんべいの断片」に傍点]!)。
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今日の買物は、――味噌、酒、ふらん草、合して三十銭。
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