、餅もうまいな、餅はうまいな。
放下着、放下着、放下着と私は私に警告した、そして監視した。……
今日はとう/\郵便が来なかつた、一日のよろこびの大半をなくした訳である。
帰庵このかた、いつとなく昼酌[#「昼酌」に傍点](晩酌はない)がおきまりになつたが、さてこれがいつまで続くか、続けられるか?
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・柿の梢のいつか芽ぶいて若葉して窓ちかく
・ひつそりとおちついて蠅がいつぴき
・焼かれる虫の音たてていさぎよく
   T子さんに
・雑草にほふや愚痴なんどきかされては(与樹君)
[#ここで字下げ終わり]

 五月十六日[#「五月十六日」に二重傍線][#「五月十六日[#「五月十六日」に二重傍線]」はママ]

曇、何となく身心重し、昨夜はねむれたが、変な夢に苦しんだけれど、十一時から四時までねむれたのだ。
だん/\晴れてきた、防府へ行かうかとも思つたが止める、さらに山口へ行かうかとも思つたが、また止める、元気もないし銭もないし。……
けさは郵便屋さんが、うれしい、ありがたいたよりを持つてきた。
独り者はなか/\忙しい、立つたり坐つたり、下りたり上つたり、炊いたり沸かしたり。…
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