私もいつしか睡つた。
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断想二三
存在の世界[#「存在の世界」に傍点]、あるがまゝの世界、それを示現するものとして私の周囲に雑草がある。
雑草の花[#「雑草の花」に傍点]、それを私の第何集かの題名としたい。
生活の単純化[#「生活の単純化」に傍点]、そこから日本的なもの[#「日本的なもの」に傍点]がうまれる。
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五月十三日[#「五月十三日」に二重傍線]
晴、好季節。
左股の注射のあとが痛い、起居が苦しい。
鶯笛、かなしい笛か、さびしい笛か、それを私が吹く。
樹明は酔がまださめきらないので、ふら/\してゐるけれど、講習があるとやらで、日曜日にもかゝはらず出勤、これも感心の一つたるを失はない。
予期したやうに、十時の汽車で黎々火が来てくれた、お土産は鮹壺雲丹、巻鮨(お手製だからひとしほうれしい)。
その雲丹を蛙堂老と青蓋人君とに贈つた、かういふハガキといつしよに、――
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下関名産の鮹壺雲丹を送ります、名物にうまいものなしといひますが、これはなか/\うまくて、初夏の食卓に磯の香が、いや玄海の波音が聞えるかも知れま
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