日[#「五月十一日」に二重傍線]
雨、五時には起きておさんどんの仕事。
地下足袋はいて街へ、びつしよりになる。
放下着。
うろ/\する油虫をたゝきつぶしたほど、いら/\してねむれなかつた。
五月十二日[#「五月十二日」に二重傍線]
まだ降つてゐる、どうやら霽れさうではあるが。
陽が照りだした、照るとなか/\暑い。
ヘビ、トカゲ、クモ、いろ/\さま/″\のものがうごいてゐる、私自身もぢつとしてはゐられないやうに。
鶯笛はなか/\よろしい、ピーピツ、ピヨピヨピーツ。
畑仕事、やうやく一畝だけ耕して大根を播いた。
春は逝く、夏近し、いよ/\晴れた、苗代作りが初まつた、それは感じのよい仕事だ。
風呂にはいり豆腐をたべた。
酒は内から、湯は外から、どちらもちよいと一杯、などゝ考へてゐたら樹明来庵、酒なかるべからずと酒を買つた、すこし酔うて、同道してF家へ押しかけて御馳走になる、それからまたSで飲む。
樹明は泥酔して行方不明になつてしまつた、私は酔へないで戻つて寝た、ふと眼がさめて、そこに酔樹明を見出した、彼がこゝへ倒れ込んだのは、まづ/\感心、すぐ寝せる、大蛇のやうな鼾声をあげて眠つた、
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