注記]しい声も更けた
・枯れた葉の枯れぬ葉の、日のさせば藪柑子
・風の鴉の家ちかく来ては啼く
 あんたは酒を、あんたはハムを、わたくしは御飯を炊く(敬治、樹明両君に)
 ふたりいつしよに寝て話す古くさい夢ばかり
・枯れて草も木もわたくしもゆふ影をもつ
・ぬかるみのもう春めいた風である
・まがらうとしてもうたんぽゝの花
・大根も春菊もおしまいの夕空
・ふるつくふうふう酔ひざめのからだよろめく
[#ここで字下げ終わり]

 二月九日[#「二月九日」に二重傍線]

朝は曇つて寒くて、いまに雪でもふりだしさうだつたが、だん/\晴れてきてぬくうなつた、吹く風はつめたいけれど。
山をあるく、風がさわがしい、枯枝をふんで寂しい微笑[#「寂しい微笑」に傍点]をさがすといふのが、ロマンチケルだ。
午後、岐陽さん呂竹さん、来庵、珍品かたじけなし、といふ訳で、さつそく一杯やつて御馳走ちようだい、うまい/\。
敬坊はいまだに帰らない、アヤシイゾ!
街へ出かけるとて、書きのこして曰く、アブラ[#「アブラ」に傍点](いろ/\のアブラ)買ひに! よかつたね!
やりきれなくなつて、街まで出かけて熱い湯にはいる、戻つて
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