がしいゆふべとなつた
・ちかみちは夕ざれの落葉ふめば鳴る
さむいゆふべで、もどるほかないわたくしで(樹明君に)
犬がほえる鳥のなく草は枯れてゐる
・水底ふかくも暮れのこる木の枯れてゐる
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三月三日[#「三月三日」に二重傍線]
さむいけれどうらゝかである、餅と酒と豆腐と。
樹明君を徃訪して、帰庵して、御馳走をこしらへて待つ、待ちきれなくて街をあるく、帰つてみれば、樹明君はちやんと来てゐて、御馳走を食べてゐる、さしつさゝれつ、とろとろとなる、街へ出てどろ/\となつて別れる。
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・酔ひざめの春の霜
・藪かげほつと水仙が咲いてゐるのも
みんな酔うてシクラメンの赤いの白いの
・風がふくひとりゆく山に入るみちで
・すげなくかへしたが、うしろすがたが、春の雪ふる(樹明に)
・洗つても年とつた手のよごれ
・心あらためて土を掘る
[#ここで字下げ終わり]
三月四日[#「三月四日」に二重傍線]
樹明君が朝も晩もやつてきて、昨夜の酔態をくやしがる。
雪がとけて風がふく、さみしいな、やりきれないな。
三月五日[#「三月五日」に二重傍線]
晴
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