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 鳴きつゞけて豚も寒い日
・何やら来て何やら食べる夜のながいこと
 もう一杯、柄杓どの(酔ざめに)
・月がぱち/\お風呂がわいた
 夜ふかうして白湯《サユ》のあまさよ
   追加
 乞ひあるく道がつづいて春めいてきた
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 三月一日[#「三月一日」に二重傍線]

曇つて寒い、井上さんから貰つてきたトンビのありがたさよ。
新若布がおいしい、私には菜食がよろしい。
何事もなし。

 三月二日[#「三月二日」に二重傍線]

晴、春寒、不自由不愉快。
我儘な猟人が朝からパン/\うつ、気の毒な小鳥たちよ。
何事も積悪の報い、甘受いたしませう。
孤独、沈黙、句作。
めづらしや女性来訪、F屋のおばさんとちいちやん、水仙もらひに寄つたのです、紅茶を御馳走する。
夜、冬村君来庵、お土産として水餅どつさり。
つゞいて樹明来、おとなしくすぐ帰宅。
さらにTさんがやつてくる、酒を持つて、――おそかりし、おそかりし。
月のあかるさ、一人のよろしさを味ふ。
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・風が明けてくる梅は満開
 いつもつながれてほえる犬へ春の雪
 待つても来ない木の葉がさわ
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