急いで帰庵することにする、八時出立、直方までは歩いた、それから折尾まで汽車、八幡まで歩く、門司まで汽車、下関へ汽船、それから黎々火居まで歩いて一泊、黎々火君の純情にうたれる。
私もいよ/\本格的癈人[#「本格的癈人」に傍点]になりさうだ、本格的俳句[#「本格的俳句」に傍点]が出来るかも知れない。
ヒダリはかなはなくても飲むことは飲める、水はなか/\酒にならない、酒は水になりやすいが。
酒と心中したら本望だ。
[#ここから2字下げ]
・けさはおわかれの太陽がボタ山のむかうから(緑平居)
・よぼ/\のからだとなり水をさかのぼる
・驢馬にひかせてゆくよ春風
・枯草ふかく水をわたり、そしてあるく
・また逢へようボタ山の月が晴れてきた
[#ここから1字下げ]
     遠賀川風景
枯葦
雲雀の歌
放牧の牛の三々五々
霞うら/\
[#ここから2字下げ]
 あされば何かあるらしい鶏は鶏どち
 焼芋やけます紙芝居がはじまります
 旅のつかれのほつかりと夕月
・枯草の日向見つけて昨日の握飯
 病めばをかしな夢をみた夜明けの風が吹きだした
[#ここで字下げ終わり]

 二月廿七日[#「二月廿七日」に二重傍
前へ 次へ
全47ページ中35ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング