よい。
今日は風が吹いた、風は禁物だ、ルンペンのからだへ吹きつける風のさびしさよ。
飲んで食べてから、入雲洞も出かけてゆく、奥さんが手伝してゐる近所の婚礼へ、――私はまづ留守番といつた体、ほろ酔で漫読、よろしうございます。
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・みちはうねつてのぼつてゆく春の山
・これでも住める橋下の小屋の火が燃える
・放送塔を目じるしにたづねあてた風のなか
・さてどちらへ行かう風のふく
・招かれない客でお留守でラヂオは浪花節
・さんざ濡れてきた旅の法衣をしぼる
   若松病院
・病人かろ/″\とヱレ※[#濁点付き片仮名ヱ、1−7−84][#「※[#濁点付き片仮名ヱ、1−7−84]」に「マヽ」の注記]ーターがはこんでいつた
   戸畑から若松へ、入雲洞君に
・あんたとわたしをつないで雨ふる渡船
 宿直室も灯されて裸体像などが
・待たされてゐる水音の暮れてゆく
・宵月のポストはあつた旅のたよりを
・旅のたよりも塗りかへてあるポスト
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 二月二十三日[#「二月二十三日」に二重傍線]

晴、すこし風はつめたいが春がきてゐることに間違はない。
もつたいなくも朝酒頂
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