途の一句である。
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朝はつめたい煙草も分けてさようなら
・なか/\寒い朝から犬にほえられどうし
崖にそうてきて曲れば蘭竹二株の早春
・汽笛《フネ》とならんであるく早春の白波
昇る日は春の、はいつてくる船出てゆく船(関門風景)
日が出るとあたゝかい影がながう枯草に
早春のさゞなみが発電所の石垣に
・投げて下さつた一銭銅貨の寒い音だつた
春もまだ寒い街角で売る猪の肉で
きたない水がちろ/\と寒い波の中へ(御裳川)
そこらを船がいつたりきたり岩に注連をかざり(壇ノ浦)
・鴎が舞へば松四五本の春風(巌流島)
・あの娘《コ》がかあいさうでと日向はぬくいおばあさんたち
・春めいた風で牛肉豚肉馬肉鶏肉
・こんなに食べる物が食べる人々が
・みんな生きねばならない市場が寒うて
・背中流してくれる手がをさなうてぬくうて
星城子居即事
・冬木をくゞつて郵便やさんがうらから
・かけごゑかけてかつぎあげるは先祖代々の墓
・よい道がよい建物へ、焼場です
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二月二十一日[#「二月二十一日」に二重傍線]
春光うらゝかである、満ち足りた気持である
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