、まことに然りで、一杯やる、おとなしく別れる、めでたし、めでたし、あゝめでたし。
餅をたべつゝ、少年時代に餅べんたう[#「餅べんたう」に傍点]を持つて小学校に通うたことをおもひだす、餅のうまさが少年の夢のなつかしさだ。
アルコールのおかげで、ぐつすり一ねむり、それから読書。
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・風の中の変電所は午後三時
風ふく西日の、掘りつゞけてゐる泥蓮
・風をあるいてきて新酒いつぱい
・寺があつて墓があつて梅の花
風が出てきて冬が逃げる雲の一ひら二ひら
・水底しめやかな岩がある雲のふかいかげ
・ちかみちは春めく林の枯枝をひらうてもどる
・夜あけの葉が鳴る風がはいつてくる
明日から、東行前記ともいふべき
[#ここから割り注]北九州めぐり[#ここで割り注終わり] 旅日記
[#ここで字下げ終わり]
二月十九日[#「二月十九日」に二重傍線]
晴、寒い、いよ/\出立だ。
樹明君が、約束の珍品を持たせて寄越す、五十銭銀貨弐枚を酒代として、そして旅の餞別として地下足袋、かたじけなく頂戴して歩きだしたことである。
まことに久しぶり行乞の旅である、絡子をかけること
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