楽しむ」に傍点]。
いつでも餓死する覚悟があれば[#「いつでも餓死する覚悟があれば」に傍点]、日々好日であり事々好事である[#「日々好日であり事々好事である」に傍点]、何のおそれるところもなく、何のかなしいものもない。
食べることが生きることになる[#「食べることが生きることになる」に傍点]、といふ事実は、老境にあつては真実でないとはいへまい。
終日終夜、寝床で読書、ひもじくなれば餅をたべて安らかに。
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・遠山の雪ひかる別れなければならない
・草は枯れて犬はたゞほえて
・雪どけのぬかるみのあすはおわかれ
・朝から降つたり照つたり大きな胃袋(ルンペンのなげき)
・かみしめる餅のうまさの夜のふかさの
・なにもかも雑炊としてあたゝかく
・小鳥も人もほがらかな雲のいろ
こゝろあらためて水くみあげてのむ
・ほつかりめざめた春めいた雨の柿の木
ぽつとり椿が雨はれたぬかるみ
[#ここで字下げ終わり]
二月十八日[#「二月十八日」に二重傍線]
雨、しと/\と春めいて降る、出立を延ばした。
午後、風呂へいつた留守に樹明来、ハムを持つてきたといふ、一杯やらずはなるまいといふ
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