かけやう、へう/\として歩かなければ、ほんたうの山頭火[#「ほんたうの山頭火」に傍点]ではないのだ!
旧暦のお正月だといふのに、百姓は田を耕やしたり、畑を打つたり、洗濯をしたり、大根を刻んだりしてゐる、こゝにも農村窮乏の色が見えるといへるだらう。
思ひがけなく、東京の修君からたよりがあつた、彼も私とおなじく落伍者、劣敗者の一人だ、そして妻君にこづかれてゐる良人だ、幸にして彼にはまだ多少の資産が残つてをり、孝行な息子があり、世才がないこともないので、東京で親子水入らずの、そして時々はうるさいこともある生活をつゞけてゐるらしい、修君よ、山の神にさわるなかれ、さわらぬ神にたたりなしといふではありませんか!
夕、樹明君に招かれて宿直室へ出かける、うまい酒うまい飯だつた、そのまゝ泊る、あたゝかい寝床だつた。
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・寒[#(ン)]空のからりと晴れて柿の木
・ふくらうがふくらうに月は冴えかへる
・よつぴて啼いてふくらうの月
・冴えかへる月のふくらうとわたくし
・恋のふくらうの冴えかへるかな
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 二月十五日[#「二月十五日」に二重傍線]

雪、雪はうつくし
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