の赤さはある
・だん/\ばたけに人がきてゐる春の雪ふる
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 二月十三日[#「二月十三日」に二重傍線]

晴れてあたゝか、曇つてあたゝか、ぢつとしてゐても、出て歩いてもあたゝか。
樹明君を訪問して、切手と煙草と酒代とを貰つた。
倦怠、無力、不感。
夜を徹して句作推敲(この道の外に道なし、この道を精進せずにはゐられない)。
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・はれてひつそりとしてみのむし
・火鉢ひとつのあたゝかさで足る
・なむからたんのう御仏の餅をいたゞく
・ふくらうはふくらうでわたしはわたしでねむれない
・汽車のひゞきも夜あけらしい楢の葉の鳴る
・火の番そこから遠ざかるふくらう
[#ここで字下げ終わり]

 二月十四日[#「二月十四日」に二重傍線]

今日は旧のお正月です、お寺の鐘が鳴ります、餅を貰ひに行きましよか、さうらうとして鉢の子をさゝげて。
どうも憂欝だ、無理に一杯ひつかけたら、より憂欝になつた、年はとりたくないものだとつく/″\思ふ。
畑仕事を少々やつてみたが、ます/\憂欝になる、読書すればいよ/\憂欝だ。
春風よ、吹きだしてくれ、私は鉢の子一つに身心を托して出
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