の水だまり
・けふは水がある川の何やかや流れる
長い手紙をかけばしたしく虹がたち
・あれこれ食べる物はあつて風の一日
[#ここで字下げ終わり]
よい眼ざめであつた、しづかなよろこびがあふれた、私はひとり、ゆう/\として一日を暮らした、しかしお天気はよくなかつた、雨風だつた。
敬治君へ長い手紙を書いた、私の心はきつと通じる、お互にもうアルコールの繋縛から脱してもよい時節である。
うれしい酒をのむがよい、酒は涙でもなければ溜息でもない、天の美禄だ、おいしい酒をおいしく飲まなければ嘘だ。
風を聴く、風もよいかな。
今日も御詠歌組がやつてきた、二銭あげる、昨夜の二銭とこの二銭とでサイフはナイフになつてしまつた、此次やつてきたら何をあげようかな(もう米もない、紙でもあげるか)。
△敵は味方に似せてゐるときいたが、まつたくそのとほりだつた、今朝、ほうれんさうを摘む時、似而非ほうれんさうをたくさん見つけた、ほうれんさうらしい草がほうれんさうにまぢつて生えてゐた。
嵐の跡――といふ感じがする、とにかく嵐は過ぎた。
酔うて乱れる酒は断じて飲まないことを山頭火が山頭火に宣誓した。
△ホントウとアタ
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