た夜の寒行の大[#「大」に「マヽ」の注記]皷が遠く
考へてゐる電燈ともつた
・冬蠅よひとりごというてゐた
・楢の葉の枯れて落ちない声を聴け
[#ここで字下げ終わり]
一月十日[#「一月十日」に二重傍線]
曇、それもよし、雨となつた、それもよし。
御飯のおいしい日であつた、ことに葱のお汁がおいしかつた。
△食べるうまさはたしかに生きてゐるよろこびの一つである。
樹明君が昨夜から行方不明となつてゐることを聞かされて、私は昨日敬治君の手紙を読んだ時のやうに、さびしくかなしかつた、樹明君、お互にしつかりしようぢやありませんか、ほんとうに生きようぢやありませんか、昨日までのやうでは、私たちはあまり下らないぢやありませんか、みじめすぎるぢやありませんか、酒を飲まないぢやない、うまい酒をうまく飲みませうよ。
夜の雨をついて寒行四人連れで来庵、御苦労さまでした。
寝られぬまゝに思ひついたこと二三、――
独酌酔中自楽といふ境界まで行きたいものだ。
健やかな、あまりに健やかな胃袋ではある!
私はたしかに私が不死身[#「不死身」に傍点]の一種であることを信じてゐる。
人生は割り切れるものぢやない、少
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